東京地方裁判所 昭和44年(ワ)7455号 判決
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〔判決理由〕三、被告は、本件事故は古家運転手にとつて避ける余地がなかつたものであるとして、免責の抗弁を主張する。
公道上で自転車競技を行なう場合、主催者としては事故防止につき万全の配慮を払わなければならない。本件競技の主催者は、監視員を配置し、白バイの派遣を要請しているのであるから、一応の手をつくしていた。
しかし、競技主催者の義務の履行補助者である監視員に過失があつた。〆田、須佐両監視員が加害バスに注意を与えることを確実に実行しておけば本件事故は起こらなかつたかもしれない。しかしながら、古家運転手としても、三差路付近にいた監視員二人の服装所持品、態度から、何等かの競技が開催されていることが予測できたはずである。又事故現場手前は極端にカーブしており、進行方向左側には高い石垣があつて見通しの悪い道路であるから、たとえ道交法の警音器吹鳴義務違反には問われないまでも、安全を期するための警音器を吹鳴して然るべき場所と考えられる。また、白バイは、競技選手の二〇メートル程手前付近を走行してきたのであるから、その赤ランプが視野に入つたときそれに則応する措置を講じておればたとえ衝突を完全に防止しえなかつたとしても、被害者の死という重大な結果まで発生しなかつたのではないかと推測される(白バイの停止の合図は、遅きに失していて、これに気付かなかつたことをもつて古家運転手を責めることは少し困難である)。
以上の次第であるから、本件事故は古家運転手にとつて全く避けられなかつた不可力的なものであるとまでは断定できないから、被告の免責の抗弁は採用できない。
四、ただし、被害者である亡昇には大きな過失があるといわなければならない。なるほど競技中は、主催者において前記のように選手の安全確保のための措置を講じているのであるから、選手はこれに信頼して競技に熱中してもよいようであるが、なお、対向車の通過がありうのであり、そのため一応左側通行を指示されているのである。従つて、競技のかけ引上道路の右側に進入するときは(このことは白バイもあえて阻止しなかつた。石山巡査証言)、ある程度は自己の責任において前方に対する注意を払わねばならない。自転車競技は下を向いて走行し勝ちであるが、下り坂にかかつているのであるから、見通しの悪い右カーブ地点を通過するに際して、顔を上げて前方を見る余裕がないとはいえない。亡昇のように、道路の右側に進入しておりながら衝突するまで全く下を向いたままでいるというのは、やはり大きな不注意といわねばならない。現に一緒に道路の右側を走行していた保坂選手は、バスに気付いてこれを避けている。身軽な競争用自転車であるから、対向車がかなり真近に迫つていても、自転車の方からこれを避けることができるはずである。
以上により、右のような亡昇の過失をしんしやくし、後段損害賠償額の算定にあたり、損害額の約七割を減額することとする。
(坂井芳雄 小長光馨 佐々木一彦)